サイト作成の思い

このサイトを作ろうと思った理由

長男が産まれる前まで私は総合病院で内科医として勤務し、日々診療を行なっていました。
コロナ禍に長男を出産しましたが、妊娠中・出産直後には特に異常はありませんでしたが、
その後、発達の遅れや異常所見が見つかり、生後半年から医療的ケアが必要になりました。

そして長男が3歳の頃に大きく体調を崩し、人工呼吸器・気管切開・中心静脈栄養・胃ろうなど、
複数のデバイスを使用する重症心身障害児となり、私はその母であり、そして主介護者となりました。

私は医療者なので手技自体は理解できますが、
その前後の準備や物品の洗浄・保管、どれくらいの時間がかかるのか、
そういった「生活の部分」はまったく分かりませんでした。
病院での知識や経験が、在宅生活ではほとんど生きなかったのです。


在宅で気づいた「生活の知恵」の力

在宅での生活を支えてくれたのは、医療の知識よりも“生活の知恵”でした。

たとえば、経管栄養のボトルをどこにかけると便利か、
シリンジが固くなった時どう工夫すればいいか、
同じ物品を限られた支給の中で大切に使いまわすにはどうしたらいいか。

そういった日々の小さな工夫を、
訪問の支援者さんや、同じように在宅で過ごす親御さんたちから教えてもらいながら、
我が家の生活は少しずつ便利で過ごしやすくなっていきました。

病院ではあたりまえに「使い捨て」「補充ありき」だった物品たちが、
在宅では「次の支給までどうつなぐか」「災害用の予備をどう残すか」という
現実的な工夫の連続で成り立っています。

それは、医療行為というよりも暮らしそのものの知恵
そして、その知恵の積み重ねこそが、在宅を支えていると感じています。


医療者として感じた“見えない壁”

長期入院から自宅に戻る時、私が感じた最大の不安は医療行為そのものではなく、
「どう生活すればいいのか」という部分でした。

でも病院では、その「生活の知恵」を教えてもらえる人がほとんどいません。
それは、医療者が在宅のリアルを知らないから。
決して関心がないわけではなく、知る機会がないだけなのだと思います。

私自身、病院勤務の頃は患者さんのことを一生懸命に考えていたつもりでしたが、
在宅を“想像すること”ができていませんでした。
どんな環境で、どんな工夫をしながら、どんな時間の流れで暮らしているのか。
知ろうとしても、知る方法がなかったのです。


このサイトに込めた想い

今はSNSやネットで多くの知恵が共有されていますが、
心の余裕がない時は見ることができなかったり、
信頼できる情報を探すのが難しい時もあります。
子供の障害が分かった時、医療的ケアが増えた時、私自身がそうでした。

その時、そばにいる医療者や支援者が、
「こんな工夫をしているお家もあるよ」と一言伝えられたら、
それだけで救われるご家族がいるかもしれません。

このサイトに載っている情報は、エビデンスや研究に基づいたものではありません。
「他のお家では、こんなふうにされているよ」というアドバイス程度の、
いわば“生活の知恵の共有”です。

けれど、その一つひとつの知恵には、
実際の生活の中で生まれたリアルな工夫と気づきが詰まっています。
医療者・支援者の方がそれを知り、
専門的な視点から「もっと安全に」「もっと負担を減らせる方法があるかも」と
新しい意見を交わすことで、
そこから新しい支援の形や物品の改善が生まれるかもしれません。

このサイトは、生活の知恵と専門知識が出会い、
お互いに学び合いながら支援をより良くしていく
暮らしと医療が一緒に育っていく、そんな場所でありたいと思っています。


結び

私は障害児の母であり、同時に成人の患者さんを診てきた医師でもあります。
このサイトでは、子どもに限らず、大人や高齢の方の在宅生活の知恵も集めていきたいと思っています。

年齢や疾患にかかわらず、
在宅で支え合うための「生活の知恵」は、どこかで必ずつながっています。

このサイトが、すべての医療者・支援者にとって、
新しい視点と学びのきっかけになりますように。

サイト作成者:和田 裕紀子




このサイトは、個人で運営しています。
たくさんの支援者に生活の知恵を知っていただくために、
登録料や会費はいただかず、無料で運営しています。

活動を支えてくださるご支援・ご協力を常時募集しています。

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